乳がん病気の症状集

乳がんの症状

  • ・初期症状なし
  • ・胸にしこりができる

遠隔転移した場合

  • ・骨の痛み(骨に転移)
  • ・息切れ、咳(肺に転移)
  • ・腹部の張り、みぞおちの圧迫感(肝臓に転移)
  • 頭痛、めまい(脳に転移)

抗がん剤の副作用

  • ・吐き気
  • ・脱毛
  • ・白血球減少
  • ・便秘、下痢
  • ・爪の異常(変色したり、割れやすくなる)
  • ・手足のしびれ
  • ・味覚異常
  • ・むくみ

放射線療法の副作用

  • ・急性障害(皮膚症状)
  • ・晩期障害(皮膚の色調変化や萎縮、皮下組織の硬化)

ホルモン療法の副作用

  • ・更年期障害(ほてり・イライラ)
  • ・手のこわばり

増えている乳がん

最近はテレビなどでも乳がんが取り上げられることが多くなっています。なぜ多くなっているかというと、主に2つの理由があります。1つは患者さんの数が増えていること、もう1つは早期発見できれば治せる確率が高いためです。昔は乳がんになると、乳房をとってしまうことも多かったのですが、今は早期発見できると乳房を残すことも可能になっています。

日本で乳がんを発症する人は、この30年間ほどで一貫して増え続けていて、現在では毎年約4万人の女性が新たに乳がんを発症しているといわれています。乳がんはもともとアメリカやヨーロッパで多く、女性の約8人に1人が、一生のうち少なくとも一度は乳がんを発症するといわれています。日本では「約30人に1人」といわれていたのですが、最近は増えてきて「約20人に1人」がなるといわれています。

また、乳がんによる女性の死亡者数も増えており、30~60歳代後半に限れば、乳がんが死亡原因の第1位になっています。

しかし、乳がんは早期発見して、適切な治療を受ければ90%以上が治せるようになっています。早期発見のためには、乳がん検診を定期的に受けるのと、自己検診を習慣にすることが大切です。

乳がんとは

乳房には母乳をつくる「小葉」と、母乳を乳頭にまで運ぶ「乳管」があります。これらの「乳腺組織」のできるがんを、乳がんといいます。

乳がんは、がんが乳管や小葉にとどまっている「非浸潤がん」と、乳管や小葉の外にも広がっている「浸潤がん」に分けられます。

●がんの進行度

乳がんの進行度を示す指標に「ステージ」があります。ステージは「しこりの大きさ」「リンパ節への転移の有無」などによって、「0期」~「Ⅳ期」に分類されて、数字が大きくなるにつれて、進行度も上がります。

・0期…非浸潤がんは0期に分類されます。

・Ⅰ期…しこりが2cm以下で、リンパ節転移がない場合です。

・Ⅱ期…「リンパ節転移がなく、しこりが2.1cm以上」をⅡa期、「リンパ節転移があり、しこりが5cm以下」の場合はⅡb期と分かれます。

・Ⅲ期…主にリンパ節転移が進んでいる状態です。がんが皮膚に及んだり、皮膚のむくみや崩れがある場合などをⅢb期、鎖骨の上下、胸骨のそばのリンパ節に転移がある場合などはⅢc期と呼ばれます。

・Ⅳ期…骨や肺、肝臓、脳などのほかの臓器に転移がある場合です。

●早期発見のポイント

乳がんでは、0期とⅠ期が早期にあたります。きちんと自己検診を行えば、およそ1cmのしこりでも確認できますし、乳がん検診ではそれ以下のごく小さながんも発見することができます。早期発見のためには「きちんと自己検診を行うこと」「乳がん検診を受けること」の両方が大切です。

乳がんの検診

●自己検診

乳がんは自分で乳房を診たり触れたりすることでも発見が可能です。小さな変化を見落とさないためには、日頃から自分の乳房をよく観察しておいて、普段の状態を知っておくことが大切です。

自己検診では、まず、鏡の前で乳房やわきの下をよく観察します。乳房の形や色に変化はないか、ひきつれやくぼみなどがないか、左右の乳頭の位置にずれがないかなどを診ます。腕を下げた状態だけでなく、上げた状態でも調べるのがポイントです。

次に、指先を乳房に当て、滑らせるようにして、変化がないかどうかを調べます。腕は上げた状態と下げた状態で調べるようにしましょう。反対側も同じように調べます。つまんだり強く押したりせず、やさしく行いましょう。

また、乳頭から分泌液が出ていないか、乳頭がただれたりしていないか、わきの下にしこりがないかなども調べます。

1か月に1回、このような自己検診を行います。排卵時には乳房が張ったりするので、閉経前の人は、月経が終わってから1週間の間に行うとよいでしょう。閉経後の人は、例えば毎月1日など覚えやすい日に行いましょう。

自己検診でしこりを感じたり、いつもと比べて「何か変だな」と思ったりしたときは、乳がん検診を待たずに、すぐに外科、乳腺科、乳腺外科などを受診して、詳しい検査を受けてください。

●乳がん検診

症状がなくても、定期的に乳がん検診を受けることが大切です。厚生労働省は、「視触診」と「マンモグラフィ」による乳がん検診を推奨しており、マンモグラフィを使って乳がん検診を行っている自治体が増えてきています。自治体による検診は、2年に1回のところもありますが、できれば自主的にでも1年に1回、マンモグラフィと超音波検査を受けることが望ましいといえます。

・検査の流れ

乳がんの主な検査には、視触診、マンモグラフィや超音波検査などの画像検査、細胞診、組織診などがあります。

マンモグラフィでは見つからなかったがんが超音波検査で見つかることもあるので、鑑別診断のためには、マンモグラフィと超音波検査の両方の画像検査を行う必要があります。

細胞診は、しこりに細い針を刺して細胞を吸引して調べる検査です。診断が難しい場合や、がんが疑われる場合には、より太い針やメスを使い、組織を採取して調べる組織診が行われます。組織診は確定診断を行うための検査ですが、がんの場合には、がんの性質や特徴を知ることができるので、治療方針を早く立てるためにも役立つという利点があります。

手術療法について

検診によってがんが見つかったときは、がんの状態に合わせて適切な治療を行う必要があります。乳がんの治療には、「手術療法」「放射線療法」「薬物療法(ホルモン療法、化学療法)」などがあり、患者さんの病状に合わせた組み合わせで治療が進められます。今回は、このうち「手術療法」を中心に勉強していこうと思います。

手術療法は、主にがんとその周囲だけを切り取って乳房を残す「乳房温存手術」と、乳房全体を切り取る「乳房切除術」があります。

以前は、乳房切除術が多く行われていましたが、画像診断の進歩や、チーム医療の普及で病理医との連携が密になったことなどによって、乳房を残せるケースが増えてきています。日本では現在、乳房温存術が手術療法の約半数を占めています。

手術法の選び方

手術療法で重要なのは、「がんをきちんと切除する」ことです。また、手術後の乳房の外見上の変化を考慮することも大切です。切除範囲は、がんの「大きさ」「広がり」「数」「位置」や、「リンパ節転移の有無」「ほかの臓器への転移の有無」などによって異なります。例えば、がんが乳管に沿って広がっていたり、複数のがんが離れた位置にある場合には、広い範囲切除することが多くなります。

がんがきちんと切除でき、しかも、満足できる形の乳房が残せる場合には、乳房温存手術を選択できます。満足できる形の乳房が残せない場合や、乳房温存手術ではがんをきちんと切除できない場合は、乳房切除術を選択することになります。

一般に、乳房温存手術は、「しこりの大きさが3cm以下」の場合に適するとされています。しかし、手術前に薬物療法を行ってがんを小さくすれば、乳房温存手術が可能になることもあるので、希望する場合は医師に相談してみましょう。現在、乳房温存手術では、できるだけ小さく、がんとその周囲1~2cmを取り除くように、円状に切除する方法が主流となっています。

なお、乳房温存手術では、残った乳房内にがんが再発する危険性があります。手術では、取り残しがないように切除しますが、目に見えないがんの細胞が残っている可能性を考え、乳房温存手術のあとに放射線療法を行うのが標準的な方法です。

手術後の変化

乳房切除術を受ければ乳房を失いますし、乳房温存手術の場合にも乳房の外見には変化が生じます。このような変化にどうやって対応するかも、あらかじめ考えておきましょう。

乳房切除術の場合は、形成外科の手術で乳房を再建することができます。

乳房温存手術の場合は、手術後の放射線療法によって皮膚が固くなってしまうため、再建手術を行うのは難しいといえます。そのため、乳房温存手術の場合は、手術後に周囲の脂肪細胞や乳腺を移動させて、乳房の形を整えます。多くの患者さんが、手術後の乳房の形に満足していますが、切除範囲の大きさによっては、手術前とは形が大きく変わることもありますので、手術後の変化を事前に医師に確認しておくのも大切です。

また、がんの位置によっては、乳輪のへりや、乳房のわきを切開するなど、傷痕を目立たないようにすることも可能です。切開の位置を確認し、「胸元の空いた服を着たときに目立たないようにしたい」などの希望を前もって伝えておくのもよいでしょう。

乳房の再建

乳房切除術後の再建手術には、「人工物(シリコンなど)を用いる方法」と「自家組織を移植する方法」があります。また、手術の時期によって、乳房切除術と同時に行われる「Ⅰ期再建」と、期間を開けて行われる「Ⅱ期再建」に分けられます。

人工物を用いる方法は、1回目の手術で袋状の組織拡張器を挿入して皮膚を徐々に伸ばし、2回目の手術で組織拡張器を取り出してシリコンに入れ替える方法などがあります。人工物は、体にとっては異物であるため、周囲に被膜が生じて固くなるなどの合併症が起こることがあります。

自家組織を移植する方法では、自分のおなか、あるいは背中の組織が使われます。この方法ではおなかや背中に傷痕が残ります。

また、「Ⅰ期再建」は、手術の回数が少なく、自家組織を移植する方法なら1回で済むので、乳房の喪失感は少ないといえます。しかし、がんの手術までの限られた時間に、がんについて考えるのと同時に、再建についても考える必要があるという短所があります。「Ⅱ期再建」は、いつでも再建手術を受けられるため、時間をかけて再建について考えることができますが、手術の回数が多くなるという欠点もあります。

後遺症を防ぐ

乳がんの場合、乳房に近いわきの下のリンパ節に転移が起こりやすいので、昔の手術療法ではわきの下のリンパ節をすべて切断していました。その結果、「腕のむくみ」などの後遺症が起こりやすく、手術療法の問題点とされていました。しかし、最近は、「センチネルリンパ節生検」でリンパ節の切除が必要かどうかを調べることにより、後遺症を避けられるケースが増えてきています。

「センチネルリンパ節」とは、わきの下に数多くあるリンパ節のうち、最初にがんの細胞が到達するリンパ節のことです。手術中にこのリンパ節を探して切除し、がんの細胞の有無を顕微鏡で調べます。がん細胞が見つからなかった場合は、リンパ節転移は起きていないと判断して、他のリンパ節は残します。がん細胞が見つかった場合は、他のリンパ節を切除します。

手術後の治療

乳がんは検診によって見つけたがんを取り除けばそれでおしまいというわけにはいきません。なぜなら再発の危険性があるからです。がんはすべて切除したつもりでも目に見えないがん細胞が残っていて再発することもあります。そのため、手術の後にも再発予防の治療を行うのが一般的です。

手術後の治療法には、局所治療としての「放射線療法」と、全身治療としての「薬物療法」に分けられます。また、薬物療法には、「ホルモン療法」と「化学療法」があります。

なかには、がんが乳管や小葉の中にとどまっている状態の「非浸潤がん」で、手術で確実に切除できたと判断できるなど、手術後に治療の必要がないと考えられる場合もあります。しかし、再発の可能性があると考えられる場合には、自分に適した治療を受けることが重要です。

放射線療法

放射線療法とはがん細胞に一定量の放射線を照射することで、細胞の遺伝子に障害を与え、増殖を抑えたり、死滅させたりする治療法です。

手術後に放射線療法が必要とされるのは、次の2つの場合です。

・乳房温存手術を受けた場合

手術を受けた乳房全体に放射線が照射されます。治療期間は5~6週間で通院して治療していきます。

・乳房切除術を受けて、リンパ節転移が4か所以上あった場合

乳房を切除した後の胸壁や、首の付け根(鎖骨の上)のリンパ節に照射します。治療期間は約5週間です。

海外での調査では、乳がんで乳房温存手術を受けた人の10年後の再発率が、放射線療法を受けたグループでは約10%ですが、受けていないグループでは約35%と大きな違いが出ています。

放射線療法の副作用は、主に放射線を照射した部位の皮膚に現れます。すぐに起こる「急性障害」の多くは皮膚症状で、皮膚が日焼けしたように赤黒くなったり、ひりひりしたりします。治療終了後6か月~数年後に起こる「晩期障害」としては、「皮膚の色調変化や萎縮」「皮下組織の硬化」などがあげられます。最近は、治療の安全性が高まっていて、重い晩期障害は起こりにくくなっています。

薬物療法

乳がんでは、がん細胞が血管やリンパ管に流れて、骨、肺、肝臓などに転移することがあります。ほかの臓器への転移を防ぐためには全身に対する治療が必要で、ホルモン療法や化学療法などの薬物療法が行われます。

薬物療法の内容は、「がん細胞の性質、リンパ節転移の数、しこりの大きさ、閉経の前か後か、年齢」などから検討されます。特に、次のようながんの性質に合わせた治療法を選ぶことが大切です。

・ホルモン感受性の有無

「ホルモン感受性」とは、女性ホルモンの一種「エストロゲン」を取り込んで増殖する性質のことです。乳がん全体の約60%にホルモン感受性があるといわれていて、このタイプの乳がんには、ホルモン療法が有効です。

・HER2(ハーツー)たんぱくの強陽性

がん細胞の表面に「HER2たんぱく」という特殊なたんぱくが多い場合(強陽性)には化学療法が有効です。

・悪性度

悪性度は「がんの顔つき」ともいわれていて、顕微鏡で見たがん細胞の核の形などから分類されます。この悪性度が高い場合には、化学療法が有効です。

ホルモン療法

乳がんでホルモン感受性があるタイプの患者さんが受ける治療法です。再発の危険性が中程度でホルモン感受性がある場合は、ほとんどの患者さんがホルモン療法を受けています。また、化学療法の後にホルモン療法を受けることもできます。

ホルモン療法は、次の3種類の薬が使われています。

・LH-RHアゴニスト製剤

主に閉経前の患者さんに使われる注射薬で、エストロゲンの分泌を抑える作用があります。治療期間は約2年間で、1か月に1回通院して皮下注射を受けます。副作用で「ほてり、イライラ」など更年期障害に似た症状や、「手のこわばり」などが起こることがあります。

・抗エストロゲン剤

閉経前と閉経後にどちらにも有効な内服薬で、がん細胞にエストロゲンが結合するのを妨げて、がんの増殖を抑える作用があります。治療期間は約5年間で、多くは1日1回服用します。子宮体がんを起こす可能性が高くなるといわれていますが、あまり心配する必要はなく、1年に1回検査を受けるようにしておけばいいでしょう。

・アロマターゼ阻害薬

主に閉経後の患者さんに使われる内服薬です。閉経後に卵巣の働きが衰えると、脂肪細胞から分泌される「アロマターゼ」という酵素が、男性ホルモンをエストロゲンに作り替えるようになります。この薬は、アロマターゼの働きを妨げてエストロゲンが作られるのを抑えます。治療期間は約5年間で、多くは1日1回服用します。アロマターゼ阻害薬はまだ新しい薬で、長期に服用した場合の副作用についてはわかっていませんが、骨密度が低下して骨粗鬆症が起こりやすくなると考えられています。また、副作用として関節のこわばりが現れ、これが関節リウマチと間違われることもあります。

化学療法

化学療法とは、「抗がん剤」を使ってがん細胞の増殖を抑えたり、死滅させたりする治療法です。抗がん剤にはさまざまな種類があり、2~3種類を組み合わせて使います。抗がん剤の多くは注射薬で、通院して点滴を受けます。治療期間は3~6カ月間です。

抗がん剤は、正常な細胞にも影響を与えるため、「吐き気、脱毛、白血球減少、便秘、下痢、爪の異常(変色したり、割れやすくなる)、手足のしびれ、味覚異常、むくみ」など、さまざまな副作用が起こることがあります。

副作用は一時的なもので、治療が終わると数か月で症状が改善し、元の状態に戻ります。また、最近は副作用の対策も進んでいます。無理なく治療を続けられるように、吐き気を抑える薬や白血球を増やす薬などを使って、患者さんを支える「支持療法」が積極的に行われています。

ただし、副作用の現れ方には個人差が大きく、副作用が非常に強い場合には、「現在の生活を犠牲にしてまで、起こるかどうかわからない再発を防ぐ治療をする必要はない」と考えて、治療の変更を考える場合もあります。

化学療法は、最近は手術前に行われる例も増えています。しこりが大きい場合には手術前に化学療法を受けることで、しこりが小さくなり、乳房温存手術が可能になることがあります。

再発・転移した場合

乳がんに対して手術を行い、再発予防もきちんと行っても、がんが再発したり転移したりすることがあります。しかし、再発や転移したとしてもあきらめる必要はありません。再発した場合でも治療を続けながら、生活を楽しんでいる患者さんも少なくありません。

乳がんの再発のほとんどは、手術後5年以内に起こります。最も多いのは手術後2~3年以内です。しかし、乳がんは進行の遅いがんで、10年以上たって再発することもあります。

現在、乳がん全体の3~4割に再発が起こっていますが、治療法の進歩によって、将来的には再発率は低下すると考えられています。

再発には、主に残した乳房にがんができる「局所再発」と、ほかの臓器にがんができる「遠隔転移」の2つがあり、それぞれで治療法が異なります。また、「再発した場所」「症状」「再発までの時間」「ホルモン感受性の有無」「HER2たんぱくが多い(強陽性)かどうか」「閉経状況」などに合わせて治療法を選ぶことができます。

●局所再発の場合

残した乳房に再発した場合は、手術でがんを切り取ります。部分的に切除することもありますが、乳房全体を切除するのが一般的です。そのあと、最初に乳がんができたときと同様に、ホルモン療法や化学療法をしていきます。

乳房全体を切除した後に、がんが皮膚に散らばったようになることがありますが、これは遠隔転移の1つとして考えます。このようながんを切除しても、また同じようにできることが多いので、手術ではなく放射線療法やホルモン療法、化学療法から治療法を選ぶことになります。

●遠隔転移の場合

がん細胞が血管やリンパ管を流れて、骨、肺、肝臓、脳などにがんができることがあります。例えば肺や脳にできた場合でも、乳がんが場所を変えてできたものとして考えて、肺がんや脳腫瘍ではなく、乳がんに対する治療が行われます。

また、今のところ、遠隔転移した乳がんを完全に治すことは難しく、「がんの進行を遅らせる」「痛みを緩和して生活の質を維持する」の2つが、治療の目的になります。例えば、糖尿病高血圧などの慢性疾患と同じように、病気と共存しながら通常の生活を長く送れることを目指します。

痛みを緩和する治療は、以前はがんがかなり進行してから始めていましたが、最近では緩和ケアを専門とするスタッフがいる医療機関が増えたこともあり、早い時期から始めるようになってきています。また、痛みを緩和することで延命効果があることもわかっています。

・自覚症状が現れた場合

遠隔転移した場合の自覚症状には、次のようなものがあります。

骨の痛み(骨に転移)

息切れ、咳(肺に転移)

腹部の張り、みぞおちの圧迫感(肝臓に転移)

頭痛、めまい(脳に転移)

このような自覚症状が現れてから治療を開始しても、遅すぎることはありません。ただし、症状が強くなってからでは、生活の質を維持することが難しくなることもあるので、自覚症状に気付いたら詳しい検査を受けて、医師と相談しながら治療を進めていきましょう。

進行を抑える治療

遠隔転移した乳がんに対しては、主に薬物療法で進行を抑えます。遠隔転移に対する薬物療法には、「ホルモン療法」「化学療法」「分子標的治療薬」があります。生活の質を維持するためには、副作用の少ない治療法から選ぶことが重要です。

まず勧められるのが、脱毛や吐き気などの強い副作用が起こりにくいホルモン療法です。この治療法は「ホルモン感受性」がある場合に使います。

最近は、副作用の少ない分子標的治療薬も使われるようになってきています。分子標的治療薬が使われるのは、ホルモン感受性がなく、がん細胞の表面に「HER2たんぱく」が強陽性の場合です。「トラスツズマブ」という分子標的治療薬が使われるようになって、遠隔転移した乳がんの治療が格段に進歩しました。これに化学療法を併用すると、さらに効果的であることがわかっています。

ホルモン感受性がなく、HER2たんぱくが強陽性でない場合には、化学療法をしていきます。

●分子標的治療薬について

分子標的治療薬とは、病気にかかわる特定の分子だけを標的にして、作用を及ぼす薬のことです。

乳がんでは、がん細胞の表面に、HER2たんぱくという特殊なたんぱく質が多くある場合とそうでない場合があり、HER2たんぱくが多い場合は増殖のスピードが速いという特徴があります。転移した乳がんの約2~3割が、HER2たんぱくが多いタイプといわれています。

このHER2たんぱくを標的にして、がん細胞の増殖を抑えるのがトラスツズマブです。この薬で副作用が起こりにくいのは、がん細胞だけを集中的に攻撃するからです。

なお、トラスツズマブは、心臓の働きに影響することがあり、治療中は定期的に心臓の検査を受けることが必要です。また、最初に薬を使ったときに、「発熱、悪寒」が起こることがあります。

●放射線療法

骨や脳に転移した場合などに、放射線療法が行われることがあります。

骨に転移すると痛みが起こりますが、放射線療法によって、進行が抑えられると同時に、痛みも軽減されます。脳の場合にも、がんが小さくなり、頭痛などの症状の軽減にも有効とされています。

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